上橋菜保子の守人シリーズ第4弾。このシリーズを読み始めたのはアニメの「精霊の守人」を見てからだ。
アニメの出来も素晴らしかったが、それ以上に小説も面白い。日本人の書いたファンタジーでありながら、水戸黄門や大魔神の様な時代劇ではなく、西洋風の剣と魔法でもない、オリジナルの世界を描いており、それでいてなお、出自が日本である「雅」を感じさせる。
構築された舞台設定の中で活躍する人物達も魅力的で、ストーリーの娯楽性にも富んでいるのだから文句が無い。強いて物足りない点を挙げるなら、善人しかでてこない所か。敵対するのが「事情が合って襲ってくる人」か「小心なので良いことができない人」ばかりで、魅力的な『悪人』が登場しない感がある。とはいえ、それも一つの世界の解釈だし、あからさまな悪役のいないことが、絵空事に短絡しない理由なのだろう。
ただし、本作には関係ないが、小谷真理の解説はちょっと頂けない。フェミニズム視点で語るのが芸風なので仕方ないのだろうが、その文脈だけで分析してしまってはもったいないと思う。フェミ視点で解説するのに、なぜ「ゲド戦記」のル=グインと比較しないのか?第2作目で地下迷路を徘徊するというオマージュまで見せているのになあ。